第3回 僕がとことん「都市農業」にこだわる理由

あくまでも「都市農業」にこだわりたい僕は、この4月、5月と国立近辺で農地を探していました。眠っている土地がたくさんあるので、「宅地化農地なら、すぐ買えるだろう」と考えていたところ、土地はあるにはあるんです。けれども、その価格を聞いて僕は驚きました。
東京・国立の売り農地が坪150万円、一反弱で約4億円!
そこで僕は「買えないのならば、借りよう」とJAさんに仲介してもらって探したところ、年間34万円の貸し賃で170坪の土地を見つけました。けれども、そこは「駐車場として使うのならいいけど、農地としては貸さない」ということでした。
そんな折、僕は隣市の農業委員会の会長にお会いして直接、話す機会がありました。すると彼が言うには、
「得体の知れないお前たちに、土地を貸すはずがないだろう。自分で耕作をしていれば、それは立派な農地だけれど、人に貸せば、それは財産になるんだから」(要約)とのこと。
なるほど、たしかにその通りです。さらに彼はつけ加えます。
「いきなり土地を借りようとするな。一体、お前たちは何をしたいんだ?」
僕は腹は立ちませんでした。むしろ、「ついにここまで正直に話してくれるようになったか」と嬉しいぐらいでした。僕には、高価な土地の有効利用を可能にする「トロ箱栽培」が都市農業を変えるという確信があるし、野菜を食育キットや観葉植物として販売することも考えています。けれども、それはまだまだ実績の伴っていない僕の考えです。
だからこそ、会長の「まずは信用を!」という言葉には素直にうなずけたのです。
1年前にこの言葉を聞いていたら、「もう農業なんて辞めて俺はAVに戻る!」と言っていたことでしょう。けれども、今は違います。
むしろ、この農業の世界に対して、「まったく落ちない高嶺の花のような女だな」とやる気がわいてきています。まずはアッシーくんでもメッシーくんでもいいから、都合のいい男として少しずつ彼女の関心を引いていくつもりです。
そのために、僕は国立に野菜中心のレストラン「農家の台所」を作り、さらに今回、八百屋まで作ったのです。こうして少しずつ信用を勝ち取って、最後は、高嶺の花のこの女性も落としてみせます。
「東京だから農業はできない」という考えに対して、僕は真っ向から挑戦を続けます。東京だからできる農業、さらに、元AV屋だからできる農業は必ずあるはずです。ここから逃げてしまっては、僕は「農業改革をするんだ!」などと偉そうなことが言えなくなってしまいます。
多くの若者が地元を離れ、農業を継がずに東京に出てきます。けれども、彼らは必ずしも農業が嫌いだとか、農業にプライドを持てない連中ばかりではないはずです。僕は、そうした若者たちを東京で捕獲します。東京で彼らに農業を経験してもらい、立派になったら、地元に送り返すつもりです。僕は今、東京に大きな網を仕掛けている最中。だから、「国立ファーム」は、今も新入社員を採用し続けています。そして、その姿勢はこれからも変わりません。
さて、みなさんご承知の通り、このたび農地法が改正されそうな流れがきています。この法案が正式に決定すれば株式会社でも農地を取得できるようになります。これは僕にとってはかなりの追い風です。だから僕は今月、北海道に農地を探しに行きます。「東京で頑張る!」と言いつつ、北海道で土地を探す。
これは僕の中では何も矛盾していません。東京では他人ができないことをやりたいと思う「ものづくり」の精神で、それ以外の土地では「商売人」としてビジネスで捉える。僕はその両面から農業という世界を見据えているのです。
2007年7月号より転載

※この記事は『農業経営者』様より許可を頂き、
発売から1ヶ月経過した後に掲載しております。
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