第11回 食料自給率を上げるため、ドバイに日本の大根を売ってきます!
先日、農水省が「これからの世界の食料需給は我が国にどう影響するのか」というタイトルで、日本人にとって悲観的なシナリオを発表しました。将来、世界中で食料の奪い合いが始まるだろう、という予測から生産者にとっては内心喜んでしまいそうなシナリオになっていました。
要因は割愛させていただいて、簡単にシナリオの結果だけを紹介しますと、世界の食料が高騰して日本が買い負けするか、食料輸出国が自国内の供給を優先して輸出規制を行なうことによって、日本に必要な食料を確保できなくなるというもの。その場合、現在の国内耕地面積だけで国内への食料供給を行なうと、戦後の食料難を脱した昭和20年代のカロリーを確保するのが精一杯な食生活になるというのです。
逆のシナリオも一つあり、日本が世界中の食料を買い漁ることができたときには、貧しい国の食糧事情をさらに貧窮させるというものでした。
そのような予測もある中、国立ファームはドバイに日本の食料を売り込みに行ってきます。一見矛盾があるように思えますが、日本の食料自給率を上げるためには、海外にどんどん日本の農産物を売り込むことが有効だと僕は考えています。
数年前、「北海道の牛乳が余っているのでみんなで飲もう!」的なCMが流れていましたが、僕は全くの逆効果だと思っています。大変失礼な言い方かもしれませんが、どんなに優良な商品であっても、どんなに丹精込めて作った商品であっても、需給の読みを誤って過剰在庫を作ったツケはお客様にお願いして支払ってもらうものではないのです。商売道において、商売人はお客様の願いを叶えるのが仕事であって、お客様にお願いをすることはあってはならないし、叶わないことなんです。だから商売人は自分の願いとお客様の願いが一致するようにお客様を上手く誘導することが仕事になるのです。
今回のドバイ行きで言うと、日本国内に売りたいのなら海外に売り、海外で評判を得ることが国内の需要を喚起し、国内においても高値で売れるようになると考えたのです。
今現在の「国立ファーム」が農業界に貢献できそうな能力は、消費者に対するプレゼンテーション能力だと思っています。今回のドバイの食品展示会では、日本ならではの農産物をアラブ人の趣向に合わせた料理に変化させることが、売り込みを成功させるポイントと考えました。そのために料理人とそのアシスタント、英語のできる営業マン、そして山形出身の農家の娘・高橋菜穂子の総勢4名で行かせることにしました。
何をどのように提供すればいいのか、傾向と対策を探るため、農業技術通信社の浅川さんの肝入りで、アラブ人の方々6名様に「農家の台所」(弊社が経営する野菜のためのレストラン)へお越しいただき、試食会を開きました。米料理、野菜料理、ジュース、生野菜、果物を各10種類ほど用意。すべてを試食しながら意見を伺ったところ、面白い発見が沢山ありました。その一部を紹介します。①宗教上食べられない食物があるので中に何が入っているかわからない物は敬遠される②米料理では生姜ライスが一番評判が良い③生野菜は良く食べるが、日本の大根は秀逸④暑いアラブでは喉が渇くので、甘い果物は好かれない……など。
そして、ドバイで売り込むものは大根に決めました。
『農業経営者』を読んでいて、たまたま見つけたドバイツアーの募集。思いつきで参加を決めてから、一番熱心に売り込むのは誰かを考え、「山形の農産物を売り込みに行け!」と言えば、菜穂子が張り切るだろうと、始まったプロジェクトです。しかし、動いてみると、色々なことが見えてきました。やっぱ、無駄に見える行動を必死にやる人生は面白いですね。
2008年3月号より転載。
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※この記事は『農業経営者』様より許可を頂き、
発売から1ヶ月経過した後に掲載しております。
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