第29回 労働者は現在、リーダーは3ヶ月後、経営者は3年後…


ここ数ヶ月の「国立ファーム」は激動しています。川下工事として「農家の台所」新宿3丁目店のオープン、「御膳・農家の台所」立川高島屋店の開店準備、高級スーパー「プレッセプレミアム」ミッドタウン店様での篤農家野菜コーナー常設開始、イベントでの試食販売を随時開催、EC通販の開設とテコ入れ、更に飲食チェーン店への卸流通設計、弁当中食部門の実験販売、加工品の販売チャンネル開拓などの模索も始まっています。

 全スタッフにはこの間に野菜の語り部としての力量を上げる為に、月4回の「農場研修」という農作業のお手伝いが義務付けられています。川中工事も急ピッチで進んでいます。集荷・ピッキング・発送センターの拡張移転と物流システムの再構築や地場朝取り採り及び集荷部隊の拡充、そして青果を扱う者として必然的に発生する青果加工品の開発です。ちなみに合言葉は「ジャム・ジュース・漬物に逃げるな!」。素材の使用量は少なくなりますが、素材を多く利用したいという考えは生産者の勝手な都合であって消費者には関係ないことです。素材をより美味しくする味噌やドレッシングなどの調味料や、素材に付加価値を付ける加工としてアイスクリームや菓子・餡といった野菜嫌いでも手を出していただける加工品の開発です。

 川上は、まあそれなりに遅々と進めています。第一次産業は10年先を見ながら進めるのが基本ですから。
 今、60名を越えた社員たちには「寝るな!休むな!」「今年がオマエたちの人生にとって正念場なんだぞ!」「浸水してくる水をかき出しながら、オールを漕げ!」と檄を飛ばしています。こんな会社の経営者である僕はどれだけ忙しいのかと言いますと、「ひま!」です。何故なら彼らが忙しいと僕の相手をしてくれないからです。ドゥ・シー・プランのドゥにひと段落着かないとシーもプランも出来ませんし、次のドゥを指示する訳にはいきません。

 それでも数ヵ月後には落ち着きます。その時に次の指示が出せるように計画を立てている最中です。リーダーは明日を想像するのが仕事ですから。しかし彼らの動きは毎日の業務報告書を読み込むことで把握しています。失敗だらけでトラブルは各所で毎日のように起きていますが、逐一報告に上がって来ますし、「私が何とかしなければ」という現場の声が聞こえてきます。どうしようもなくてヤル気が下がるか、事故が起きない限りはほっておけば良いんです。責任感のある幹部はそういった不条理な環境から自然発生するものです。

 僕がこのような考えを持つリーダーになった理由は師匠のテリー伊藤の影響です。伊藤は(呼び捨てにするのは未だに身内意識が強いもので)一言で言えば「子供のような上司」でした。自分のやりたいことならば、時間・予算・人力的に無理なことでも「やりなさい!」と命令するだけです。当然手伝ってはくれません。そして出来ないと殴られるか伊藤班から外されます。しかし伊藤のやりたいことを映像にして放送されると視聴率20%番組として評価されてしまうんです。逆らえませんよね!結果が伴っている子供には。逆に大人の上司がいて、無理のない指示をして、一緒に苦労をしてくれても結果を出せないのであれば、僕は付いていきたくありません。

 多くの人は後者の上司を選んでしまうでしょう。実際伊藤の下で耐えられたのは10人に一人でした。という僕も毎日のように「辞めたい!」と漏らしていました。ですが一度でも勝利の美酒を味わってしまった僕は今更無理のない仕事をしたくはありませんし、部下にもさせたくはないんです。だから今日も100の能力を持った部下達に200の仕事を与えるべく、働かずに頭を動かしています。全ては部下に勝利の美酒を飲ませるために!

2009年9月号より転載

※この記事は『農業経営者』様より許可を頂き、
発売から1ヶ月経過した後に掲載しております。
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この記事へのコメント

  1. >どうしようもなくてヤル気が下がるか、事故が起きない限りはほっておけば良いんです。責任感のある幹部はそういった不条理な環境から自然発生するものです。

    本当に放置したら誰もいなくなります。私の職場も完全放置状態です。社長の顔は週に1回見るかどうか、あいつはホンマもんの馬鹿です。がなりさんはそんな人間ではないと思いますので応援しています。

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