第41回 山形ガールズ農場へ夏のミッション「客の都合に合わせて仕事を創出せよ!」


 東北の夏は、野菜農家にとって寝る時間が無くなるほどの忙しさのようです。山形ガールズ農場の女子たちも真っ黒になってテンパっています。先日も新卒入社の女子が居眠り運転で田んぼに横転してしまいました。(幸い女子も車も無事でした)

 そこで、僕が代表の菜穂子に出したミッションは、「忙しいからと生産だけにかまけているんじゃない。夏休みは観光業だ!8月7・8日の土日でイベントをしなさい。題して“ガールズ農場を巡る欲張り収穫ツアー”を開催して、来場者500人を集めなさい!」です。

 除草剤を使用しない畑や農薬を使用しない水田は雑草との格闘でしょう。その戦いを女子の素人集団で勝利しなければならない代表の菜穂子に言わせれば、「農作業だけで手一杯です!」なんでしょうが、それは彼女の主観であって、東京の冷房の効いたオフィスで戦略を立てる僕に言わせてもらえば「風が吹いているから進め!」となります。パブリ効果で山形県内ではガールズ農場の認知度は高いそうですし、今年の夏休みは食育ツアーと題して田畑を訪ねる旅行が盛んになっています。客観的に判断する経営者ならば、どんな都合をつけてでもこの機を逃してはいけないのです。今年500人のお客様と触れ合って喜んで頂ければガールズ農場ファンクラブが生まれるんです。ファンは新たなファンを産み出します。来年は日数を増やして5000人に来て頂くのです。その延長線に上代の5割以上安くなる卸値ではなく上代で販売できる六次産業の観光農園があるからです。

 イチゴなどの観光農園を見ると、僕は常々思うんです。「なんでイチゴだけなんだろう」と。イチゴに特化して栽培しているのはあなたの勝手であって、摘み取りをするお客様から見れば、他にも収穫できたらもっと楽しいはずなのに、なんで加温ハウスを作ってイチゴと同時にパパイア・マンゴーとか収穫させてあげないんですかね。商売の基本は差別化と付加価値であって、農業よりも一歩進んだ観光農業をしている人たちなのに一人前の商人にはなりきれていないんですよね。

 山形ガールズ農場の女子たちを商売も出来る百姓に育てたい僕は、儲かっていない今だからこそ将来のための仕事をさせたいのです。生産基盤がキッチリと整ってからとか、知名度が完全に知れ渡ってからとかでは遅いのです。ビジョンに向かって並行して整えることをしないと、生産で利益が出たからこれ以上しなくても良いのではないかと考えるのが、人の常だから。更には、創業期に生産だけをさせていると、楽しい農業のはずが次第に楽しくなくなり、潰れてしまう社員が出て来てしまうので、明るい未来を創造させてあげるためにも並行作業をする意義があるのです。

 今年行うイベントの具体的な指示は「村全体を巻き込んだ祭りにしろ!」でした。観光農園と呼ぶには程遠い規模のガールズ農場にとって、ご近所さまに応援して頂かなければ来場者を喜ばせることが出来ません。また、農場規模拡大を目論む菜穂子の当面の課題は村社会に溶け込んで応援されることです。そのためには、菜穂子を通して村に人(従業員とお客様)とお金を集めることが有効になることでしょう。今、ガールズの女子たちがご近所の農家さんに畑で桃やブドウ、水田でじゅんさい、牧場でミルクを収穫させて頂けるよう、蕎麦屋さんやピザ屋さんには露店を出して頂けるようにお願いして回っています。

 と、原稿を書いていた僕に、「農家さんが忙しいからと、協力してくれません!」と、たった今、菜穂子から連絡が入りました。農家さんのための農業改革は農家さんがなかなか協力してくれません。はたして菜穂子はどう乗り切るでしょうか?


※この記事は『農業経営者』様より許可を頂き、
発売から1ヶ月経過した後に掲載しております。
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この記事へのコメント

  1. 苺などの観光農園を見て・・おおよそ、誰しも思う。
    そんで野菜のもぎ取り農園で、大セールしてる所もでてきてる。
    結局、やるかやらないかの話。

  2. 北海道から、山形農業ガールズ応援してます。私は、まだまだ農業7年目。

    11歳歳上の主人と全部で5人で小規模農業をしています。生産した作物は自家直売所での販売が8割。

    高温が続いた北海道で、今年も私はテンパリました。

    がなりさんの主張もとても理解でき、ガールズ達のイッパイイッパイも手に取るように解かります。

    そひて、農業という職業の魅力と、農業化家に蔓延している、革命が必要ともいえる体質も。

    これからも、国立ファームを北方より、観察・応援させていただきます。

  3. 観光いちご園経験者談、やってみて何ぼだと思います。

    所有している農地の立地環境によります。
    いちごの栽培環境は水田が多いと思います。
    まず、畑にいちご圃場を作る人はいないでしょう。
    近隣の駐車場の確保など容易でないのが現状。
    いちごは人の手による作業が非常に多い作物です。
    他作物を増やせば、栽培管理がおろそかになります。
    その作物のプロフェッショナルゆえ良い点は多数あります。

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