日本の農業を変えて行くにあたり、国立ファームは、川上から川下まで一貫して行う体制が必要と考えました。
というのも、今の農業界では、生産者にとっての“お客様”が「流通業者」になってしまっているからです。生産者が作った野菜を実際に食べるのは「消費者」です。ならば本来、生産者は「消費者」をお客様と考え、その潜在的なニーズを汲み取るべきです。
しかし、どんなに優秀な生産者でも、自分で流通できなければ、流通業者に野菜を託すしかありません。そうなると、生産者は流通業者に買ってもらうために、流通業者が望むものを作らなければなりません。
流通業者が望むのは、流通しやすい野菜です。形が揃っていて、効率的に箱詰めできる野菜や、見た目が綺麗な野菜…。こうして、美味しいけれど、箱詰めしにくい形の野菜や、数量が揃わない野菜、見栄えが悪い野菜は、ないがしろにされてきました。
今、全国にファーマーズマーケットが広がりつつあります。ファーマーズマーケットでは流通業者を挟まずに、生産者から消費者に直接販売します。こうして直売を行う生産者の中には、消費者のニーズに耳を傾け、他では売っていない珍しい野菜や、見栄えが悪くても味は美味しい不ぞろいな野菜を販売する人が増えてきました。
このように、生産者側には、少しずつ変化が見えてきました。しかし、流通の現場では、まだまだ消費者の潜在的なニーズは尊重されていません。なぜなら、消費者側に野菜の知識がないからです。どうせ消費者には野菜の真の価値がわからない。だから、流通業者は「安い」とか「有機」とか、とても大雑把な判断基準で野菜を流通させているのです。
なぜ、消費者には野菜の知識がないのでしょうか。それは、他でもない流通業者が、千差万別な野菜の魅力を、消費者に説明できずにいたからです。例え生産者がこだわって良い野菜を作ったとしても、それを消費者に正しく伝える流通がなければ、その価値は消費者には分からないのです。
流通業者の役割について、自動車業界を例にして考えてみましょう。自動車業界では、軽自動車もあれば、ベンツやポルシェといった高級車もあります。高級車を買う人がいるのは、自動車の営業マンが、その価値をしっかり消費者に伝えてきたからです。もしも、「自動車=交通手段」という認識しか消費者になければ、自動車市場は、燃費が良くて価格の安い軽自動車だらけになっていたことでしょう。
今までの野菜流通は、まさに軽自動車だらけの自動車市場のようなものです。ナスは、3本で100円程度のもの…その程度の認識しか消費者になければ、1本200円のナスは売れないのです。
本来、農業の根幹はものづくりです。農業改革のためには、こだわった野菜を作る生産者・安全で安い野菜を作る生産者・高くてもおいしい野菜を作る生産者…等々、多様な消費者のための野菜作りをする生産者を、育成・支援していく必要があります。
しかし、今まで述べた現状から、良い生産者を育成した所で、流通のサポート体制がなければ、生産者のこだわりは消費者に届きません。生産者だけでなく、流通業者・八百屋やレストラン…つまり川上から川下までが一丸となって、消費者のために努力する必要があります。ですが、それぞれが別の会社だと、何かと利害関係が発生してうまくいきません。
だから国立ファームは、全てを一貫して行うことにこだわりました。1つの会社として利益を分け合い、川上から川下まで全てを行えば、同じ目標に向かって協力できるからです。こうして、一貫して良い物を作り、育てる体制ができれば、志を同じくする生産者や、八百屋・レストランとも、結び付いて行くこともできるでしょう。
さて、それでは、実際にどこから手を付けるか?生産という入口には、少数でも、良いものを作っている生産者がいました。けれど、消費という出口には、良いものを伝える場所はまだ殆どなく、結果、その良さがわかる消費者も殆どいませんでした。そこで、まずは実際にこだわりの野菜を食べていただき、その価値を伝える場を作ろうと、国立ファームは、川下から農業改革を始めたのです。
こうして、2007年1月に先陣を切ってオープンしたのが、野菜レストラン『農家の台所 くにたちファーム』。オープン以来、お客様から高い評価をいただき、順調に売上を伸ばしています。
今まで1号店は実験店として位置付け、採算度外視で運営してきました。その中で、人材育成や顧客ニーズの把握に注力した結果、顧客満足度を維持しつつも、効率的に店舗展開していくための土台が整いました。現在、レストランでは2号店・3号店の出店計画が進んでいます。
また、実際にお客様と接する中で、消費者の野菜への関心は、想像以上に高いことがわかりました。こんなおいしい野菜は初めて!日頃からこんな野菜を食べたい!…そんなお客様の声が、国立ファームの次の一歩を後押ししました。
こうして、2007年7月には、八百屋『大根1/3本からお届けします。』が開店。小規模店で人通りも少ない立地でありながらも、地域密着型戦略が功を奏し、地元で受け容れられています。八百屋は既に国立市内に2号店の出店を考え始めました。
レストランから発した好循環の連鎖は、それだけではありませんでした。
レストランの好評価から、国立ファームが仕入れる野菜に注目が集まっています。他社レストランから野菜卸売の依頼が増え、順調に計画が進んでいます。他社レストランへのサラダバー導入支援事業も始まります。
また、レストランの人気デザート等の販売についても、お客様からのご要望が増えています。そこで、新たに食品加工事業をスタートします。自社食品加工工場を設立し、国立ファームオリジナルの農産物加工品を作るべく、事業構想を描き始めました。
そして、川下のレストランから始まった連鎖は、とうとう川上の生産部門にもつながりました。農業業界の規制は厳しく、農地取得は容易ではありませんでした。しかし、1年間地道にレストランや八百屋の実績を作ったことで信頼もでき、ようやく、2007年8月、国立市内に2反の農地を取得いたしました。
トロ箱栽培は、これまでの4倍の面積を使用し、本格的に事業化します。有機農法を学んだ第1次生産研修生も国立に戻り、有機農業を始めます。今後も、自社農場を取得・拡大していく予定です。
いよいよ国立ファームの根幹である、オリジナルな「ものづくり」が本格的に始まります。
既存の各事業とも、期を同じくして拡大局面を迎えています。新たな事業も始めます。
国立ファームは、これから一気に加速して行きます。