「おもしろくすることで、伝わる人数がかわってくるんです。」~第4回座談会レポート~

7月31日、久しぶりの「高橋がなりと明かそうの会」(以下、座談会)が開かれた。第四回目となる座談会には、青果と農業の関係者7名が集まった。
今回の特徴は、生産の分野に関与している方はおひとりだけ、後はすべて流通の分野の方ばかりだったということだ。農産物をいかに魅力的に消費者に伝え、利益を生み出すか、実践を踏まえたそれぞれの考えを熱く語り合うこととなった。

参加して下さった方々を簡単に紹介しよう。「食と農」という大きなテーマのもとコンサルティング・卸・通信販売事業を行う会社、クロスエイジを経営している藤野さん。ガイヤの夜明けでも紹介された方だ。パチンコ屋を経営しており、今後中国をからめた野菜の流通を考えている岩本さん。農業を盛り上げるための方法を模索しながら、野菜の卸事業を行っている森山さん。紅一点、フードビジネスに関するコンサルティング業務を行い、数々の売り場を作ってきた小島さん。レインボーキウイを生産する愛知の農園、高橋農園さんからの紹介で参加することとなった平野さん。岡山を本拠地とするお菓子会社イシカワが始めた果物の卸事業を引き受けている。そして平野さんのご紹介で山梨からいらっしゃった古屋さん。古屋さんも果物を中心とした卸事業、果物の加工事業を行っている。そして、生産分野に関与予定、フリーターの植木さん。植木さんは高校の農業科を卒業し、短いながらも農家での研修経験もあるのだが、まだ農業の世界に一歩を踏み出す準備中だ。

まずは、高橋が国立ファームの設立から現在のまでの流れをはなし、その後、自己紹介という流れとなったのだが、その自己紹介が非常に充実したものとなった。みなさん、自己紹介と自らの農業と流通に対する問題意識とそれに対する取り組みが一体となっているのだ。

例えば、古屋さんは「果物は販売期間があまりにも短い、ただまっとうにやってても商売にならないんですよ」と、自らの加工事業への取り組みを語った。古屋さんが勤めるのは山梨の砂糖の製造・卸事業を行う会社だ。古屋さんも元々は砂糖の営業のために工場やレストラン、製菓店を回っていたのだが、顧客からの要望があり果物の卸事業をはじめた。「果物を持っていったときの反応が、砂糖を持っていったときの反応と全然ちがうんです。ほんっとに喜んでくれる。これは嬉しいな、と気持ちよくなった」。果物は高い評価を受け取扱店舗は増えていった。しかし、砂糖の業界事情を知っていると驚いてしまうほど、果物はロスが多い。これではいくら喜んで頂けても利益は出ないし継続できない。そこで取組をはじめたのが加工事業だ。
はじめは、砂糖の製造会社だけに果物の砂糖漬けを作ったのだが、「俺が作った味がわからなくなる」と農家さんから大不評。現在は素材の味を生かし、かつ使用添加物を最低限まで落とした、クオリティの高い加工品を作ろうと研究中だ。
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そんな古屋さんの話を受けて高橋は「これ、ぜひ食べてみてください」と参加者に差しだした。国立ファームの「カリッと種あり干し葡萄」だ。

€(参考写真:グラスシリーズ)

「グラスに入っているんですね」との驚きの声があがる。プラスチック製の透明のグラスに大粒の干し葡萄が入っており、それが透明の筒に包まれている。「どうやって使ってもらうか、を前提にしてパッケージを考えたんです」と高橋。この干し葡萄は80gで980円。国産の一級の巨峰を原料としているので、どうしても高価格になる。「この価格では売れない、無理だと考えるんじゃなくて、どうやってこの味の干し葡萄を届けるかを考えたんです。自家用にはそこまでのお金をかけなくても、プレゼントにはお金をかけるじゃないですか。だったらいっそ、パッケージにもお金を使って、高価ってことを前面に押し出してしまう」。綺麗なだけでなく、パーティーに持っていき、グラスを取り出せばそのまま使えるパッケージにすることで、ただの干し葡萄から、空間を華やかにする贈り物に変身させ、農家の台所のお土産コーナーだけでなく、スーパーやワインショップでも好評の一品だ。

その話を受け、今度は森山さんが負けじとシャルドネで作った枝つきの干し葡萄を紹介した。「ワインと同じ葡萄から作ったっていうと、お客さまの反応がちがうんです」ワインは干し葡萄に比べて総じて高価格だ。それと原料を同じくするものとして売り出すことで、一般的な高価格であることを気にさせなくする。好きなワインがどんな葡萄からできているかという好奇心に答えることもでき、ワイン好きの方々に好評なのだという。

その後、売り場のつくり方、青果業界と農業業界の古い体質などに話は進んだ。
平野さんがお土産で持って来て下さった、瀬戸ジャイアンツとマスカットオブアレキサンドリアが冷たく冷やされテーブルに上がり、甘い香りの中、話ますます盛りあがった。


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高橋が何度も繰り返した言葉がある。「だって、このほうがおもしろいでしょ」という言葉だ。高橋は、資本残高の底が見え始めた今も赤字が続いていることを述べた上で、「おもしろいか、おもしろくないか」を選択の基準とするスタイルを貫くことを強調した。
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座談会当日にも行われていた「新れんこんフェア」。このフェアのサブタイトルは「霞ヶ浦・男たちの新れんこん祭~高須賢一さんとれんこん三兄弟のバトルマッチ~」。異なる農家さんのれんこんをプロレス風に対決させてしまうという企画だ。また、恵比寿店・新宿店のカウンター席に置かれた農家さんの紹介メモ「パラパラ」。料理を待つお客さまに楽しんで頂くために置いてあるものだ。例えばそこで、千葉県の斉藤完一さんはこう紹介されている。「酒好き・女好き」。野菜作りの随一の腕ももちろん、その人柄も魅力である斉藤さんだからこそその言葉で紹介し、お客様の話題になっている。そして、選挙ポスター、新宿店の天井から下がる「農家キャラクターのぼり」もまた、「おもしろく」農家さんを紹介している。

  
€(参考写真:左-新れんこんフェア、中-選挙ポスター、右-農家キャラクターのぼり)
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「おもしろくすることで、伝わる人数がかわってくるんです。マニアだけが関心を持って、マニアだけがお金を払っていたことに、普通の人がおもしろがってお金を払うようになる」そう、高橋は強調した。
いい野菜を作ることができる農家さんならば、もっと評価し、価格にも反映させる。農家のピラミッドを作るべきだというのが高橋の考えだ。「斉藤完一さんのひとみ五寸にんじんは明らかに味がちがう。味おんちの僕が驚いてしまったくらいなんです。このにんじんが、将来的には1袋1000円で売れるくらい、品質の違いがしっかり評価されるようにしたいんです。」それが、農業界の希望になると高橋は語り、参加者から共感の声があがった。
帰りぎわに、平野さんは言った。「農業界に、農業と野菜をおもしろがる気持ちを注入しようとしているんですね。楽しみだ。」
お互いへの刺激にあふれた座談会となった。

そして、座談会終了後。
座談会の時間になかなか言葉を発することができなかった植木さんと高橋が2人、閉店後の農家の台所の一席で向かい合っていた。農業への興味はあるが、なかなか踏み出すことができない植木さんに、高橋が喝を入れていたのだ。
「緊張で、何もしゃべれなかった」と2者対談の後つぶやいた植木さんだったが、実はこの座談会後に、ある大手人材派遣会社が経営する農場の研修制度に応募し、現在結果を待っているところだという。その研修制度は、3年間研修生として働けば農家として独立できるというものだ。座談会の夜に高橋から受けた「師匠を見つけろ」という言葉から、「自分は誰を師匠にしたいのだろう」と考えた植木さん。記憶を手繰ると「この人だ!」と思う人がいることに気づき連絡を取ったところ、ちょうどその方が監督する農場が研修生の追加募集を始めたところだったのだという。農家になるという夢に向けて一歩踏み出した植木さん。植木さんを篤農家として農家の台所で紹介できる日を期待しよう。

(文責:商品部 史帆)

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